畑の風土(テロワール)の表現

ワイン界の用語でテロワール(Terroir)という言葉があります。簡単に言えば、その土地、気候、文化が生み出す個性の事を指します。ワインにおいての話なので、ぶどう栽培(自然)とワイン醸造(人)にて創り出されますが、それが表現されるかどうかは、ほぼほぼ、ぶどう次第と考えています。というのも、栽培されたぶどうにその栽培地の特性がある事を前提に、それを活かした醸造をする事で表現されるものだからです。

なので、ぶどうにその栽培地の特色を表す事、つまり、良いも悪いもその栽培地の自然環境を素直に受け入れ、ピュアに育てる事が大切だと考えています。畑からグラスまで繋がり、飲んだ時にその情景が浮かぶ様な風土感じるワイン、そのためのぶどうを作っていきたいと思います。

ここから成るワインを想って

ワイン用ぶどうは収穫後、醸造をされワインとなります。ぶどう農家としてはぶどうを栽培する事が仕事であり、ワイン醸造家はワインを醸す事が仕事ですが、それは人の話であって、ぶどうからすれば最初から最後まで繋がっています。人の都合が全面にかかってしまったぶどうからできるワインは、満足のいくものに成り得るかと言われると、正直私は疑問です。ただ、農家、ワインメーカー、どちらにも立場があり、その構造上解決しがたい問題である事も理解しています。

そんな中、ここにおいては、基本的に自分の為にぶどうを栽培していくわけとなります。なので、畑の上においてもそこから将来成るワインをイメージしながら、芯のある愛情をかけ育てていきたいと考えています。

また、「良いワインは良いぶどうあってこそ」という言葉がある様に、ワインの品質は原料であるぶどうの品質に高く依存します。品質がマイナスのぶどうから、プラスマイナスゼロのワインを造る事は醸造家の技術力であり腕の見せ所ですが、マイナスのぶどうからプラスの品質のワインを造る事は難しいです。良いワインを造る最前提には、良いぶどう有りきという事です。

ワイン造りは畑からです。

柔軟さと挑戦力

農業やワイン造りだけでなく、モノを生み出す世界は、先駆者の経験からそこに伝統的知恵や膨大な経験値が重なりできたセオリーがある事が多いです。特に果樹は基本的に一年に一度の栽培で、経験も一年に一度です。当然、ぶどうからなるワインも同様です。私自身もそういう仕事をしてきたので、基本的な考え方のベースは、そこにあります。

ですが、そんな中でも、新たな試みやいわゆる非常識と考えられる事に挑戦してみることは、その後たとえ上手くいかなかったとしても、それ自身は多くの人が知り得ない新たな知見となり、またそこから新たなアイデアやクリエイティブな考えを起こすきっかけになります。もちろんリスクを背負い挑戦するわけなので、全体的なバランスが大事となりますが、どの世界でも先端を走っているところは、見えない所や表に出ない所で、したたかに並々ならない挑戦を繰り返していると思っています。私は大手では無いので、したたかにはしません(いきません)が、常に新たな事に挑戦する気持ちは、これから先もずっと大切にしていきます。

また、栽培地である宮城県七ヶ宿町はそもそもワイン用ぶどうの栽培について前例のない未開の地です。よって、この先何が起こるかわからない事ばかりですし、ここでは通用しない事や、逆にここでしか通用しない事も出てくると思います。そういった様々な事に対し柔軟に対応していく考え方を持ち、より良いぶどう栽培に向けて錬磨していきます。